Dialogue
くりやの対話

2021/12/30

「応援」とは、信じ切ること

飯田さやかさん×栗岡大介

くりや創業を陰から見守ってくれていた存在である飯田さやかさん。「応援」をテーマに対話しました。

飯田さやかさん

米国インディアナ大学Bloomington校卒。シリコンバレーのKPMGに入社し、米国公認会計士資格(USCPA)を取得。日本帰国後、イー・アクセス株式会社に創業時から携わり、株式(新規上場等)や借入で合計3000億円を資金調達、最終的にソフトバンク株式会社と株式統合。ソフトバンク株式会社にて海外拠点立上げ、LINE株式会社にて投資・上場準備、Mistletoe株式会社CFOを経て、現在は複数のベンチャー企業でCFO を務める。

会うたびどんどん素敵に

栗岡大介:僕がさやかさんに最初にお会いしたのは、2017年。
さやかさんは当時Mistletoe(孫泰蔵氏が創業、スタートアップ育成を手がける)のCFOだったので、僕が投資先候補を紹介しにいったんですね。

飯田さやかさん:その時は、大ちゃん(栗岡のこと)は、すぐ帰っちゃったので(笑)。だからあんまり印象はないなあ。

栗岡:そう。紹介だけして「あとはよろしく!」って、かなり失礼でしたよね、ごめんなさい(笑)。
しばらくはそれっきりだったのが、2018年にさやかさんたちが企画したアートシンキングのワークショップに僕も参加したのをきっかけに仲良くなったと思います。

飯田:フランスのビジネススクールで開発されたメソッドを初めて日本に持ってくるということになって、起業家、アーティスト、投資家、いろんな面白い人たちに参加していただきました。
その後くらいから、大ちゃんが展覧会とかアートのイベントとか、いろいろ誘ってくれるようになったんだけど、あれはどうしてだったの?

栗岡:さやかさんの「変化」に興味津々だったから。Mistletoeって当時どんどん変革していてオフィスという場所がなくなったり、雇用体系が変わったりしていましたよね。
普通の人は混乱すると思うのに、さやかさんは逆で、会うたびにどんどん素敵になっていったんです。

飯田:泰蔵さんがある日「さやかさんは“やらねばならない”から解放されるべきだ」って言ってくれて、いきなり翌日、管理部門を離れることになっちゃったの(笑)。あとは好きなことだけをやってください、って。

とはいえ、私って子供の頃から割といい子で親や先生からやりなさい、って言われたことをきっちりこなしてきたから。急に好きなことやっていいって言われても、「やりたいこと」が見つからなかったの。だから、まずはそれを探すところから、だったんだよね。「アンラーン(Unlearn=身につけた知識や経験を必要に応じて捨てること)」をテーマにして、これまでの学んできたこと、やってきたことを手放しながら。

それで、ちょうど大ちゃんがいろんな展覧会に誘ってくれるので、とりあえず乗ってみようかな、って。アート作品を前にして、私の目線と大ちゃんの目線の違いを知るのが面白かった。

栗岡:僕は「変化率」のあるものが好き。解き放たれていくタイミングのさやかさんがあまりに素敵だったから、いろいろ刺激をもらっていたんだと思います。

飯田:他の人と比べてやりたいことが見つからない、って後ろ向きになったりもしていたんだけど、「それでいいんだ」って気づけた時があった。そうか、私は「人をサポートする」のがやりたいことなんだ、って。

栗岡:そこからの輝き方がすごかったんです。「聞いて、こんなすごい人がいるの!」って。さやかさんの「応援したい」という個人の欲求を突き詰めたら社会が変わるかもしれない、って本気で思います。

当時の自分自身は伸び悩んでいた頃だったけど、人を「応援する」というあり方を僕はさやかさんから教えてもらいました。こうやって突き抜けて、人を愛せることって素敵だし、応援することは「信じ切る」ということなんだ、ということを気づかせてくれて。独立にあたっても、すごく背中を押してもらった。姉のような存在です。

栗岡:正直、大ちゃんが独立するって聞いた時は、初年度からこんなにたくさんプロジェクトを持ってくるって思わなかった。これまでのいろんな出会いが巡り巡って、生かされているんだろうね。

イノベーションに一番必要なもの

栗岡:振り返ってみると、さやかさんとはまだそこまで付き合いは長くないんです。でも最近、僕がある投資先を紹介した時に「大ちゃんがいいっていうなら、私手伝うよ」ってすぐに言ってくれて。そんなに信頼してくれているんだ、って感動しました。

飯田:一緒に展覧会に行っていた、その積み重ねがあるのかもしれないね。お互い育ちもキャリアも違うけど、同じものを見ながら語り合ってきて、だんだんお互いにいいと思う価値観が合うなって。独立してから、さらにその目利きに磨きがかかっているなと思う。大ちゃんの場合は「これとこれがどうやったらくっつくの?」ってとんでもない組み合わせをいつも持ってくるから、驚いちゃう。

栗岡:イノベーションに一番必要なもの、わかったんですよ。それは、「面白がってくれる人」!

飯田:ああ、なるほど。

栗岡:イノベーションは、「新結合」という意味ですよね。でも、新しく結合させるってやっぱり難しいことだから、そこを肯定してくれる人が必要で。
さやかさんは「また大ちゃんったら面白いの見つけてくるんだから!」って言って、いつもすごいのせてくれるんです、僕を(笑)。

飯田:確かに、よく言ってそう(笑)。私がお手伝いしている人たちも、みんな新しいことにチャレンジしているから、「それはできないよ」とか「やめておいた方がいいよ」とか、たくさん言われてきているはず。だから「いいんじゃない、それ」って肯定する人って必要なのかなって。イー・アクセス時代、千本会長と一緒にいることが多かったんだけど、経営者って大変なんだな、孤独なんだな、って漠然と思ってた。話しを聞く相手になるだけでも、その人は自分できっと考えを整理できるから。私はそういう役割になれたらいいな。

栗岡:さやかさんは経験も人脈もあるし、イノベーションをアシストするためなら、いろいろやれる人。チアリーダーになったり、パスを出したり、時には力尽くでゴールを狙ったり。「私がなんとかせにゃいかん」という顔をする時もあって、それが格好いいんですよ。

飯田:そうなの?知らなかった(笑)。大ちゃんがこうやって言語化してくれるから助かる。自分でそう思ってやってないから。

栗岡:逆に、僕のことはさやかさんが言語化してくれているから、お互いにやってるということかもしれないです。

さやかさんが一番「逃げない」

飯田:案外、私は人見知りだから、本当に「この人!」ってなってからじゃないと、自分からはいけない。大ちゃんは初めて会う人でも自分からどんどんいくね。

栗岡:僕はとにかく結合のタネを見つけるのが好き。言語化できない領域でピンときたら、追いかけます。さやかさんが応援したいと思う人に共通点ってありますか?

飯田:モノづくりの人が好き。単純に、自分ができないことだから憧れちゃう。

栗岡:製造業のスタートアップは、一番資金調達が難しいですよね。世の中にないものを作るって投資家も理解できない場合が多いから、とにかく大変。でも、さやかさんはそういう時にも、逃げないですよね。

飯田:昔、泰蔵さんに「起業家を応援するポイントはどこか?」って聞いたら、「最後逃げない人」って言っていたので、逃げない人をサポートするなら、自分も逃げちゃいけないな、って。

あと、青臭いかもしれないけど、やっぱり何か社会のためによくしたいっていうのがあるから、「大義がある」人を応援したいかな。

栗岡:「好きなことだけやる、共感する人とだけやる」って、さやかさんが言ってくれたこと、本当にその通りだなと思います。誰かのために、愛を持って立ち上がれるって、すごく幸せなこと。さやかさんとはやり方は違うけど、僕も自分なりの寄り添い方でやっていきたいな、と。これからもよろしくお願いします。

飯田:こちらこそ。いつもご飯食べて、お酒飲んで、笑ってるだけだけどね!